富士登山競走 2027
データで敗因を洗い直して、計画を立て直した話
2026年に自己ワーストを出しました。悔しかったので、時計のログ・公式リザルト・気象庁の観測値を全部つき合わせて、 何が起きていたのかを調べました。その要点と、そこから逆算した来年の計画を公開します。
総合97位 / 734人
上位3.0%
看板は3:00:00
何が起きていたのか
1. 33分遅れた
2023年に3:11:16で走って、40代の入賞ラインまであと6分でした。2024年も3:17:09。射程に入っていたつもりでした。 それが2026年は3:44:18。33分遅い。
当日は暑かったし、山頂は雲ひとつない快晴でした。正直、最初は天気のせいにしたい気持ちがありました。 でも数字を見ると、気象で説明できるのは27分のうち4〜6分だけでした。残りは自分の状態です。
2. 一番落ちていたのは、山ではなくロードだった
ここが一番意外でした。
順位も生タイムも、その年の暑さや参加者のレベルで動きます。そこで同じ日・同じコースを走った他のランナー自身を物差しにしました。 自分の区間タイムを、その年その区間の上位5%のタイムで割る。分子も分母も同じ条件なので、気温も日射も混雑も打ち消し合います。小さいほど強い、という指標です。
- 2022
- 2023 PB
- 2024
- 2026
2023年の山岳2区間は0.843と0.810。上位5%より16〜19%速い。自分でも忘れていましたが、ちゃんと山を登れていました。
そして2026年に一番悪かったのはロード区間の1.108。しかもこの区間、2026年のほうが涼しくて曇りで、条件は有利だったんです。言い訳のしようがない。
山は伸ばさなくていい。伸ばす場所はロードだけ。2023年の山岳2区間は、40代表彰台の平均より既に優秀でした。維持でいい。 やるべきはロードを速くすることでした。
3. 練習量は過去最多だったのに、山だけ半分になっていた
「練習が足りなかったんだろう」と思っていました。違いました。 90日で733km、365日で1,362km。どちらも過去最多です。総獲得標高87,032mも自己ベストの年を上回っていました。
ただ一つだけ、はっきり減っていたものがあります。
トレランと登山だけが4大会で最少。自己ベストの年の56%でした。 自転車で登った標高は増えていたので総量は誤魔化せていましたが、山を登る力は自転車では作れなかった、ということだと思います。
もう一つ、耳が痛い数字が出ました。60分未満のジョグ137本のうち98本(72%)が最大心拍の87%超。 毎日走ってはいたけれど、その毎日がほぼ全力走でした。ゆっくり走る日が、ほぼ無かったわけです。
2027年をどう作るか
4. 五合目を「表彰台と同じ通り方」で終える
サブスリーへの積み上げ方は3案を比べて、全区間を少しずつ削る案にしました。 ロードだけで作ろうとすると12.8%短縮(ハーフ1:10相当)で射程外、山だけで作ろうとすると上位5%より23〜26%速く登る計算になって、どちらも現実的ではありませんでした。
| 区間 | 2023年(自己ベスト) | 2027年の目標 | 短縮率 |
|---|---|---|---|
| 市役所 → 馬返し(ロード10.8km) | 57:55 | 52:30 | 9.4% |
| 馬返し → 五合目 | 46:35 | 43:00 | 7.7% |
| 五合目 → 本八合目 | 1:05:51 | 1:04:00 | 2.8% |
| 本八合目 → 山頂 | 20:55 | 20:30 | 2.0% |
| 合計 | 3:11:16 | 3:00:00 | — |
五合目1:35:30は、40代表彰台の平均1:35:24とほぼ同じです。 「表彰台と同じ通り方で五合目を終えて、山で差をつける」。これなら4区間とも現実的な数字に収まりました。
5. 前半の貯金は、実力ではなく借金だった
2024年のデータを見て、これは自分でも薄々感じていたことが数字で出ました。
| 区間 | 2023 | 2024 | 差 |
|---|---|---|---|
| 前半(市役所→五合目) | 1:44:30 | 1:42:07 | −2:23 |
| 後半(五合目→山頂) | 1:26:46 | 1:35:02 | +8:16 |
| 差し引き | 3:11:16 | 3:17:09 | +5:53 |
前半で2分23秒稼ぐために、後半で8分16秒失っていました。投資の3.5倍を返した計算になります。
五合目まででも1時間35分かかります。つまり定義上、そこは「閾値以下でしか成立しない区間」です。 そこを閾値超えで押すと、あとで必ず返す。当たり前のことなんですが、レース中は分からなくなるんですよね。
なので2027年は、五合目で自分に一つだけ問うことにしました。 「ここからあと1時間半、この強度で登り続けられるか?」。道具も時計もいりません。これが一番大事な判定だと思っています。
6. 練習をノルウェー式に組み替える
マリウス・バッケンが体系化して、インゲブリクトセン兄弟が世界の頂点で使っている型です。要点だけ書くと、こうなります。
- 週2日(火・木)だけ、閾値を朝夕2本。最大心拍の80〜87%=「あと2本いける」で終える強度。追い込まない
- それ以外の日は、驚くほどゆっくり走る。70%未満を厳守。ここが自分に一番足りていなかった
- 週1日以上は完全休養。2026年は最大19日連続で動いていました
- 日曜は山を2〜3時間。ただしゆっくり登る
「毎日そこそこ全力」から「週2日だけ強く、あとは本当にゆっくり」へ。 やることは減るのに、たぶんこっちのほうがきつい。誘惑に勝ち続ける必要があるので。
7. レース日程
| 日付 | 大会 | 目標 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 2026/9/6 | 京極町ロードレース 10km | 全力 | 再始動の刺激 |
| 2026/9/26 | ルスツ ロゲイニング(ソロ3h) | — | 長時間活動 |
| 2026/10/10 | 北海道すこやかマラソン ハーフ | 1:24〜25 | 階段0.5段目 |
| 2026/10/31 | THE CHALLENGE RACE SENDAI 1 ハーフ(公認) | 1:23 | 階段1段目 |
| 2026/11/14 | みやぎ・名取シーサイドマラソン フル | 3:20前後 | ★秋の目標=現在地の測定 |
| 2026/12/13 | Jヴィレッジハーフ | 1:22 | 階段2段目 |
| 2027/2月末 | 八海山スカイスノー | — | 冬の切り札 |
| 2027/3/6 | THE CHALLENGE RACE SENDAI 2 ハーフ(公認) | 1:20前後 | 階段3段目 |
| 2027/5月 | 仙台国際ハーフマラソン(公認) | 1:18切り | ★★合否判定 |
| 2027/7月下旬 | 富士登山競走 第80回 | 3:00 → 3:05 | 本番 |
全力で走るのはフルの1本だけです。ハーフは全部「階段」であって「試験」ではない、という位置づけにしました。 1:23 → 1:22 → 1:20 → 1:18 と、半年かけて上げていきます。
これをどうやって作ったか
8. 全部 Claude Code に読ませました
ここからは走りの話ではありません。ただ、同じことをやりたい人がいるかもしれないので書いておきます。
使ったのは Claude Code(AnthropicのAI。ターミナルで動くタイプ)です。渡したのはこれだけ。
- Suuntoアプリの中にあるデータベース(2013年からの全ワークアウト 3,532件)
- 大会公式の完走者・未完走者リザルトPDF(第75〜79回の22本)
- 気象庁の富士山・河口湖観測所の1時間ごとの値
- 体組成計のCSV
あとは日本語で会話するだけでした。「区間ごとに他の人と比べて」「天気のせいにできるか調べて」「じゃあ来年の計画を作って」。 グラフもPDFもスマホ版も、全部その流れで出てきます。このページもそうです。
一番驚いたのは、自分では思いつかない切り口が出てくることでした。 「実力指数」(その年の上位5%を物差しにする)も、「馬返しを通過した瞬間、その前後2分に何人いたか」を数えて渋滞を検証したのも、 自分の発想ではありません。1,887人分の通過タイムを数えるなんて、手作業では絶対にやりません。
9. ただし、間違えます
これは正直に書いておきたいところです。
最初の分析で「2026年は山頂が氷点下で異常に寒かった」という結論が出ました。 グラフもレポートもPDFも、全部それで作り込みました。まるごと間違いでした。
原因は、気象庁のページから数字を取り込むときに「露点温度」の列を「気温」として読んでしまったこと。 富士山頂の観測は海面気圧と降水量が空欄で、列が1つずれていたんです。しかも2023年と2024年は湿度がほぼ100%で気温と露点がほぼ同じ値になるため、 検算をすり抜けていました。
気づいたきっかけは、データではありませんでした。 「今年は山頂が暖かかった、ってみんな言ってたけど」という自分の記憶です。 そこから調べ直したら、正しくは例年より2℃暖かい、と真逆でした。
体感とデータが食い違ったら、まずデータを疑う。 AIは間違った数字でも、もっともらしい結論と美しいグラフを作ってきます。作業は任せられますが、 「その数字、本当に合ってる?」と聞ける人間が要る。ここは省略できないところだと思いました。
10. おまけ:コースアニメーション
2026年大会の通過タイムを使って、実際のペースどおりに登っていくアニメーションも作りました。 上位のランナーと自分が並んで登るので、どこで抜かれてどこで抜き返しているかが分かります。